1.ミトコンドリアとは


全身の細胞のひとつひとつはこんな構造をしています。

この細胞の中に、ミトコンドリアという小さな構造があります。

 

 

このミトコンドリアで、人間のエネルギーの素となるATP(エーティーピー)という名前のエネルギー分子を作っています。

全身のほぼ全細胞が、このATPを燃料にしています。ATPは細胞のガソリンです。

 

私たちはATPがないと生きていけません。

 

ミトコンドリアは身体のエネルギーを作る発電所です。

 

 

 

ミトコンドリアは全身の細胞一つひとつになんと数百〜数千個含まれていて、細胞ひとつに含まれるATP分子はなんと10億個です。

しかも、1個のATP分子は20秒で1回リサイクルされています。

 

つまり、膨大な量のATP分子が全身を生かすために必要なのです。そして、このミトコンドリアで作られているATP分子こそが”自然治癒力”の原料となります。

 


2. ミトコンドリア機能低下による症状


ミトコンドリアの働きが悪いと、細胞はATPを作ることが出来なくなります。

 

ミトコンドリアはさらに細胞を成長させたり、細胞同士のバランス関係を保つ役割、細胞そのものが傷んだら自ら死を選ぶという、かなり重要な役割を任されています。


 

ミトコンドリアは脳、網膜、心臓の細胞に特に多く含まれていて、脳の細胞ひとつの中にはなんと1万個も含まれています。

 

ミトコンドリア病といわれる、いくつかの難病がありますが、いずれも細胞内のミトコンドリアが上手く働きません。

とくにミトコンドリアを多く含む、心臓に同時に異常をきたし、知的障害、脳出血や視力低下、心臓病、筋肉の麻痺を引き起こします。いかにミトコンドリアが全身の臓器において重要な役割を果たしているか、がわかります。

 

全身のエネルギーを作る発電所が上手く作動しなければ、さまざまな病気を引き起こし、自己治癒力も働きません。

 

傷の治りが悪い

風邪を引きやすい

思考力が低下、忘れっぽい

疲れがなかなかとれない

いつもどこかの調子が悪い

病院で異常なしと診断されたがいつも不調

 

これらの症状は、一般的に『老化』という言葉で片づけられてしまいがちですが、実は

慢性的にミトコンドリアの機能が落ちている

ということを表しています。


3. ミトコンドリアを鍛える6つ


(各項目をクリックして下さい。)


各項目について説明します。


 ①栄養(材料・栄養を補う)


『質の良い材料で若返る』

 

私たちの細胞は、身体のなかの『すでに存在する物質のリサイクル』と『外から取り入れたもの(主に呼吸食事)』から出来ています。

そして、ミトコンドリアを含む全身の細胞はを多く含みます。

また、脂肪、タンパク質、アミノ酸などの原料から作られ、ビタミンとミネラルによって緻密にその機能がコントロールされています。

どれが欠けてもミトコンドリアは機能を最大限に発揮できません。

 

現代人の生活は概してビタミン不足が言われます。また、糖質や質の悪い脂肪が多く、タンパク質が不足しがちです。良質の減量が強いミトコンドリアを作ります。良質のタンパク質は良質のアミノ酸から合成されるため、バランスの良い食事が重要です。

<副腎疲労・食事編> <食事について>

 


②ストレス対策


『適度なストレスで若返る』

適度なストレスはミトコンドリアを活性化すると言われます。

 

運動プチ断食などの適度なストレスはミトコンドリアの数を増やし、機能を活性化することがわかっています。

 

同時に、ミトコンドリアがATPを作る過程で、活性酸素という分子が作られます。

活性酸素は細胞内での情報伝達・免疫・代謝の調節など、重要な役割を果たす一方で、細胞を傷つける強い毒性があります。

重度のストレスでは活性酸素が増えすぎてしまい、細胞は死んでしまいます。

 

この細胞が傷ついて、死ぬ途中で何か異常が起きると、死にきれなかった細胞は、下の正常な状態にも戻れずに病気や癌を引き起こします。

いつものストレスを『適度なストレス』に変えることが細胞を守るカギです。

(→病気とは”ストレスのカラクリ”ストレス対策


③デトックス(有害物質を解毒・排泄する)


『排泄経路を確保する』

現代人は、100年前には地球上に存在しなかった『”不”自然』な化学物質や有害な汚染物質に日々さらされて暮らしています。

空気や食事、皮膚を通して体内に取り込まれるこれらの異物を除去、解毒するためには、臓器や細胞はさらにエネルギーを必要としています。身体に入る前にしっかり見極め、汗をかく、便通をコントロールするといった排泄しやすい身体を作ることで可能な限り自分の身体を守りましょう。

→有害物質の除去(具体的に出来ること)


④ 空腹刺激 


『お腹を空かせて若返る』

プチ断食ファスティングが一般的に知られるようになりました。

 

毎食、満腹まで食べ続けるよりも、カロリー・量ともにカットして少食を続ける方が20年後の見た目の若さはもちろん、病気の発生率が明らかに低かった赤毛サルの話は有名です。

もちろん、人間と猿とでは毎日の暮らし方は異なりますが、少食や断食は細胞を若返らせ老化を食い止める効果があることはすでに多くの研究者が証明しています。

朝食をとるまでぼーっとする、食後の強い眠気や甘いものを常用がないなど、持病や副腎機能に問題のない方で(→副腎疲労の項、参照)、空腹によるイライラや焦り、疲労感などの異常な感覚がない『健康に自信のある方』は腹6分目や週末や仕事のないリラックスできる時に、いつもより一食少なめに食事をする、など無理のない範囲でぜひ試してみてください。


 ⑤寒冷刺激


『冷水刺激で若返る』

(重度の冷え性、心臓病の方はオススメしません)

 

寒さを感じると、身体は熱を産生するために脂肪を燃やします。また、寒さを感じると成長ホルモンや抗炎症効果のあるテストステロンが増加して、古い細胞が死んで新しい細胞に置き換わることが実験でわかっています。

 

また、寒さは身体の解毒機能を高める抗酸化物質のグルタチオンを生成します。

 

初めての方は安全のために、はじめは数分冷水に顔をつけるなど、身体の狭い範囲の冷水刺激から始めてください。

入浴後、顔に水をつける、膝下に冷水をかける、慣れてきたら範囲を広げていきます。

時間も5秒、10秒、15秒といったふうに、ご自分で気分や体調を見ながらアレンジしてください。

決して無理はしないこと、細胞のミトコンドリアが増えるのを思い浮かべながら冷たさを楽しんでください。

 

終わったあと、身体がポカポカしてきたら熱産生が行われています。増えるミトコンドリアを思い浮かべましょう。

 

毎朝の冷水での洗顔は最も簡単な方法です。冷たさをしっかり感じてミトコンドリアを増やしましょう。


⑥ 有酸素運動 


『オススメの ”HIIT”で若返る』

 

 

有酸素運動が身体に良いことは有名です。これはミトコンドリアそのものに良い効果があるからです。

運動はPGCー1αというミトコンドリアの増加を促すタンパク質を増やします。

このPGCー1αが特にHIIT(高強度インターバルトレーニング)で増加することがわかっています。

 

HIITは強度の高い運動と、短時間の休憩を繰り返すというものです。

例えば、


 

30秒 ダッシュ

30秒 歩きながら休息

30秒 スクワット

30秒 歩きながら休息

  


といったように、30秒ごとの激しい動きと30秒ごとの休憩(止まらない)を交互に繰り返します。


重たいダンベルを持ち上げたり、筋肉に負荷をかけるウェイトトレーニングやランニング、水泳などの持久力トレーニングに比べて、HIITは若返りホルモンである成長ホルモンの増加を10倍も高めることがわかっています。

 

ジムや通常の運動は今ひとつ興味がない、、、という方でも、足や腰の痛みがない方は自宅でのHIITを日常的に取り入れることから是非初めてみてください。(数多くのHIITがネット上で紹介されています)

 


Endnotes / 参考文献:

 

Véronique Ouellet et al., "Brown Adipose Tissue Oxidative Metabolism Contributes to Energy Expenditure during Acute Cold Exposure in Humans," The Journal of Clinical Investigation 122

 

Mitsuo Kouda, ”Eating light,Eating right"

 

Anna Lubkowska, "Whole-Body Cryostimulation―Potential Beneficial Treatment for Improving Antioxidant Capacity in Healthy Men―Significance of the Number of Sessions," PLoS ONE 7, no. 10 (October 15, 2012)

 

Martin J. Gibala et al., "Brief Intense Interval Exercise Activates AMPK and p38 MAPK Signaling and Increases the Expression of PGC-1alpha in Human Skeletal Muscle," Journal of Applied Physiology 106, no. 3 (March 2009)