腸を鍛える



1.腸内環境の大切さ


 

① 腸は第二の脳


ヨーグルトやぬか漬け、納豆などの昔ながらの発酵食品が身体にいいことや、健康には腸内細菌が良く働くことが大事だということは多くの人が知る時代になりました。

 

良く聞く言葉になった”腸は第二の脳”とはどういうことでしょうか。

 

もともと胃や腸といった食べ物の通り道は迷走神経という神経で脳と繋がっています。

 

さらに腸内細菌が作るセロトニンという神経伝達物質が健康に欠かせないことはご存知の方も多いかもしれません。うつ病患者では体内セロトニンが低下していること、セロトニンが他の脳内伝達物質のバランス調整や情緒の安定にかかせない物質であることがすでに明らかにされています。

身体の臓器をコントロールするのが脳や脊髄からの神経の働きであることは想像に難くありませんが、

腸にも腸の壁のなかに、”腸管神経系” という独自の神経系からなるネットワークがある

と言われています。

  

これは腸が脳からの影響を受けずに、食事などの外部からの異物に対して反応する、

”独立した仕組みを持っている” ということです。

 

腸そのものの反応が脳にダイレクトに伝わる

ということは、脳を大事にするのと同様に

 

”腸を大事にする必要がある”

 

ということです。 


② 愛すべき腸内細菌は体の中に40~100兆個も住んでいます。そして毎日、それぞれの役割を担っています。

 

人間の細胞の60兆個よりも多くの細菌と共生していると言われています。

 

善玉菌は主に腸内で糖分を餌に、炭水化物や繊維質を分解し自分達の栄養にします。これを私達は”発酵”と呼びその恩恵に預かっています。

悪玉菌は主に腸内でタンパク質を分解し、自分達の餌にしています。これを私達は発酵とは呼ばずに”腐敗”と呼んでいます。

善玉、悪玉という名前はついていますが、どちらも私たちが食べたものを毎日けなげに分解処理する有りがたい存在です。

 

 

腸内細菌の働きは以下のとおりです。


ビタミンを作る

 (ビタミンA、B群、K) 

免疫に関わる細胞のバランスを調節する

排便などの腸の動きを調整する

有害な細菌を分解する

タンパク質の消化、アミノ酸に分解する

抗菌・抗カビ作用のある物質を生成する

有害金属を自ら取り込み保持する


あげればキリがありません。

この愛すべき隣人を、味方につけない手はありません。悪玉菌と呼ばれる腸内細菌も飼い慣らせば暴れずに私達が摂取した食事を分解・処理してくれますし、善玉菌が喜ぶ生活習慣でその子孫を増やせばサプリメントなしで腸や全身の調子を上げていくことは可能です。

実際、昔の人はそうやって暮らしていたのです。


2.リーキーガット症候群



リーキーガットが起こる仕組み


 

口から入った食べ物は、噛み砕かれ、胃から十二指腸、小腸、大腸に流れていきます。これらの通り道は実は一本の通り道で管になっているので、『消化管』と呼ばれます。

消化管の壁は粘膜と呼ばれる薄い細胞の膜で出来ていて、これはとても柔らかく、ここから様々な栄養素を私達の身体に取り込みます。口の中と似た柔らかさで、とてもデリケートにできています。

 

この腸の壁の細胞の間にすき間が出来ると、栄養を効率よく吸収することが出来ないばかりか、

不必要な異物(アレルギーの原因になるタンパク質、化学物質、有害金属、細菌、ウイルス)

を血中に取り込んでしまといわれています。



リーキーガットの原因はストレス、有害金属、食物、病原菌、抗生物質など様々です。

 

なかでも小麦製品に含まれるグルテンがリーキーガットの一因として有名ですが、

それだけが原因ではありません。暴食などの物理的なストレス、食べ過ぎは胃腸の壁を過剰に進展させ、食品の腸内での長時間の腐敗による有害物質が胃腸に負担をかけていることを見落とさないようにしましょう。

 

また、アルコール、カプサイシン、繊維質の少ない食事が細胞の隙間を繋ぐ作用を弱めると報告されていますし、

腸のストレスには、外的なもの(食事による負荷)のほか、内的なもの(精神的ストレス)をもちろん含みます。精神的ストレスはふだんほとんどが腸内に住んでいる免疫細胞の働きを悪くしてしまいます。

 

 

 

また、カンジダ菌も細胞の隙間に菌糸を張って増殖するため腸の壁がさらなる炎症を起こすため、悪玉の代表のように

いわれていますが、そもそもカンジダ菌がリーキーガットを始めたわけではありません。

いつもは悪さをしないはずの日和見菌のカンジダを増やす原因は何でしょうか。

精神的ストレスがお菓子や砂糖の摂取に繋がっているのであれば、カンジダを増やさないサプリや食事と同時に、精神的ストレスを緩和する必要があります。 

 


 食物アレルギーや身体の不調の原因


リーキーガットによって傷付いた腸の壁は栄養を効率よく正常に上手く吸収することが出来ないばかりか、取り込まれた不必要な異物が血中に流れ込みます。これらの異物処理のために肝臓や腎臓、全身の臓器がさらなるエネルギーを必要とします。

 

そして、これに対抗して体内の免疫細胞はこの異物に対して抗体を作ります。

 

異種タンパク(もともと人間の体内にないタンパク質)に反応して出来た抗体は、

次に食事や皮膚などの外部から摂取、接触した同じタンパク質に対して過剰に反応することになります。

アレルギーを起こすということです。)

 

リーキーガットが腸で慢性的に起きていると、臓器はフル稼働で働き続け、副腎はその炎症を鎮火させようとコルチゾールを使い続けます。全身の細胞のミトコンドリアでさらにATPが必要になります。

これらへの対策は腸粘膜にストレスをかけないということです。

 

休ませる

保護する

栄養を与える

 

加えて、日和見菌であるカンジダを飼い慣らすことが大切です。


3.カンジダ症


カンジダ菌そのものは健康な人の腸にもいる常在菌の一種です。

カンジダは砂糖が大好きです。過度の糖質摂取ではカンジダが異常に増殖します。

 


以下の症状で当てはまるものはありますか。


□ 腹部の膨満や便通異常(便秘・下痢)

□ 水虫・爪の変形

□ 原因不明の痒みのある皮膚炎

慢性的な鼻症状

□ 多動・イライラ

□ 集中力欠如・ボーッとする

□ 気分が落ち込む、抑うつ気分

□ お菓子・パン・ジュースの常用

□ 糖質欲求が強い

□ 口腔カンジダ、鵞口瘡、カンジダ食道炎、膣カンジダ症を既に診断されたことがある


上にあげた症状はいずれもカンジダの異常増殖で引き起こる症状の一部です。

 

ひとつでも当てはまれば、症状改善にカンジダ対策は有効です。

なんども言いますが、カンジダ菌はいつもいる常在菌です。有害な水銀を自ら取り込み私たちを守っている、という重要な役割もあります。

カンジダ症状があるということは 

”体の腸内細菌のバランスが崩れているから注意すべきですよ” 

という警告です。

カンジダを殺菌して全滅させることは目的ではありません。

異常に増えている原因を探って、腸内細菌どうしのバランスを崩さないようにしましょう。

 


4.リーキーガットとカンジダ対策


症状があれば、”カンジダ菌が増える食生活を正す”ことが目的です。

カンジダ菌を増やさない食事ポイント


1. 糖質は控えめ、精製された穀物農作物はなるべく取らない。

2. 薬味、香辛料、ハーブを使用する

3. ココナツオイルを取り入れる

4. 八分目でとにかく咀嚼

5. お菓子などの嗜好品を食べすぎている理由を考えてみましょう。


1.砂糖の摂取は控える


我慢できない人は、甘みの強い野菜やハーブ(生のフェンネルなど )またはキシリトールやステビア、アガベなどの自然の代替甘味料を使用する。

(人口甘味料は❌避けましょう。)


2. 薬味、香辛料


生姜、ニンニク、ねぎ、胡椒、ハーブ類(ネギ、オレガノ、コリアンダー、バジル、パセリ、ローズマリー)

匂いの強い薬味やハーブ類はカビの仲間カンジダの増殖を抑えます。胃に負担のない程度で積極的に取り入れて下さい。 


3. ココナツオイル


ココナツオイルは多くはラウリン酸、加えてカプリル酸カプリン酸という中鎖脂肪酸を多く含みます。これらはカンジダの増殖を抑えるといわれています。カンジダ対策ではカプリル酸というサプリメントを使用します。これらの成分は細胞のミトコンドリアの機能を高めるためさらにおすすめです。ただし、ココナツオイルはもともと南国の食べ物で、体を冷やす作用があるので、冷え性の方は温かい飲み物に入れたり、量を調整して下さい。

起床後、就寝前のココナツオイルプリング⏩は口腔内のカンジダ対策としてもおすすめします。 


4. 腹八分目と咀嚼


食事量が多いと、腸の仕事量が増えます。食べる間隔が短いと常に働き続けなければいけません。食事といえども、身体に対しては異物ですから、腸の細胞は常にそれが何か、消化できるかどうかを判断して、栄養になるよう細かく分解していきます。

 

塊のまま胃や腸管内に入ると、大きなものは消化されてどろどろになるまでさらに胃や腸内に停滞し続けます。

口で咀嚼するということは、胃や腸を休ませるための大事な工程と言えます。自分の胃や腸を労る気持ちで、しっかり食事を咀嚼して胃腸の負担をとるとともに、満腹中枢を満足させて、食べ過ぎを防ぎましょう。

また、

唾液は食品に含まれるカビ毒を無害化するという報告がなされています。唾液をしっかり出して咀嚼することは、何よりも簡単なカビ対策です。 


5.腸内環境を整える方法


 

①腸を休ませる

②腸内細菌を育てる(食事で増やし育てる)

③腸内細菌を増やす

(サプリメントと具体的な菌の種類)

 


腸を休ませる


感染性腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性腸炎、癌による腸からの出血、などなど、腸から出血した時に入院で治す方法は、まず第一に安静と絶食、点滴、です。つまり、胃腸を動かさないことが何よりも1番の薬です。

 

従来から、長期間、腸を全く使わない場合に表面の細胞が弱ってしまう(腸上皮の絨毛が萎縮する、と表現されます。)ことが知られていました。

入院中は粒子の小さいブドウ糖とアミノ酸が腸の表面の粘膜の直接的な栄養になることから、絶食中もこれらを含んだ液体を口から入れる対策をとることもあります。

参鶏湯の鶏がらスープや、流行りのボーンブロススープも滋養を付けるには最強です。

また、味噌汁(上澄み)とおかゆ ならもっと手軽です。老若男女問わず食していただける、病人食としての定番です。

 

身体の弱った人ほど、お粥や流動食などの消化に時間のかからないものをすすめます。

つまり、できるだけ消化に負担のない食事が病人には適していると、実験しなくても昔から経験でわかっていたのです。

そして、これに近づくように、食べたものをよく噛むことを忘れずに実践ください。


腸内細菌を育てる(食事で増やして育てる)


発酵食品を食べる( 味噌汁、納豆、漬物、麹食品、ザワークラウト、テンペ、甘酒)ことは、腸が喜ぶ細菌を補ってやる方法です。

一日一食は味噌汁、週に数回、納豆や麹、漬物などの発酵食品を積極的に摂取する習慣をつけましょう


腸内細菌を増やす(サプリメントと具体的な菌の種類)


サプリメントは可能なかぎり菌数の多いものをオススメします(菌数が多いと価格が上がります)。

放屁(おなら)、便の形状や腹部膨満感などの症状を考慮して、種類を変えたり、回数を減らしたり、一日ごとに使うなど自分に合った種類、取り方を探してみましょう。

 

その他、菌の特性を書きますので選ぶ際に参考にしてください。

 

 


また、すでに胃腸症状や乳製品にアレルギーのある方、発達障害などのお子さんは乳製品に含まれるカゼインに反応しやすい場合がありますので、乳成分の含まないプロバイオティクスを使用して下さい。



Note:

1)Lyte M (2013) Microbial Endocrinology in the Microbiome-Gut-Brain Axis: How Bacterial Production and Utilization of Neurochemicals Influence Behavior. PLoS Pathog 9(11): e1003726.

2)務台方彦;N .Food Ind,20,17(1978)

3)OrlaーJensen, ”Parasitenkd.Infektionskr.” Hyg. Abt.2,104,202(1941)