副腎を鍛える
1.副腎とは
2.副腎が弱ると起こる病気
3.副腎が弱る原因
1.副腎とは
副腎は左右の腎臓の上にある親指の先ほどの臓器です。この臓器の働きは生命維持装置であり、多種多様なホルモンを出します。自己治癒力とは切っても切れない『コルチゾール』という副腎で作られるホルモンについて紹介します。
<コルチゾールの主な働き>
① ストレスから身を守る
② 肝臓で糖を作る
③ 脂肪を分解する
④ 免疫を抑制する(過剰な炎症、アレルギー反応を抑える)
例えば、ストレスを感じた時 (精神的ストレス、疲労、空腹、寒暖差、不快だと思った全てのことがストレスになります。)
脳はこれを感じて、脳から副腎を刺激するホルモン(副腎刺激ホルモン)を出して、副腎にコルチゾールを出すように指令を出します。
そして、副腎でコルチゾールが作られた後、血液の中に流れて全身の臓器に届きます。
2.副腎が弱ると起こる病気
副腎機能の低下は『万病のもと』と言われます。
感染症
喘息
うつ病
糖尿病
高血圧
ホルモン異常
など
様々な疾患の原因になるからです。
以前より
関節リウマチや膠原病などの自己免疫疾患
喘息やアトピー
潰瘍性大腸炎
腎炎
など
免疫が関与している病気にステロイドが用いられてきました。
それは、ステロイドには体内で起こっている炎症を強力に抑える効果があるからです。
ICUに入院するほどの重傷の患者さんや、癌患者さんの末期にステロイドの点滴を使うことがあります。
それほど、ステロイドは身体がピンチにあるときのストレスに対応するための効果が絶大なのです。
このステロイドというのがコルチゾールと同じ働きをする物質です。
魔法の薬 ”ステロイド” は副腎ホルモンのコルチゾールのことです。
でも実は本来のステロイドは、もともと私たちの身体の中で作られているのです。
3. 副腎が弱る原因
その①コルチゾール不足
もともと身体で作られていたはずの副腎ホルモンのコルチゾールが足りなくなる主な理由は2つです。
① コルチゾールの生産が追いつかない
② コルチゾールの材料が足りない
つまり、これらは治療にステロイドを必要とするような様々な病気を引き起こすことになります。
コルチゾールが足りないと、副腎からの指令を受けて肝臓でエネルギーとなる糖が作れません。そのため、血糖が不安定になります。そして、糖尿病や低血糖症の原因になります。
また、脂肪の分解が出来ずに余計な脂肪がついたり、炎症を抑えることが出来ないので過剰なアレルギー反応(花粉症や食物アレルギー)を起こします。酷くなると免疫異常など、上に挙げたような数々の病名がつくことになります。
副腎が弱る理由は、『いわゆる体へのストレス』が全てです。
精神的ストレス、物理的ストレス、栄養不足、睡眠不足、体内重金属蓄積、消化機能の低下、他の疾患の罹患など理由は多岐にわたります。精神的に『ストレスは身体に悪いと考える』ことが副腎を酷使することは”病気とは”で説明した通りです。
毎日ストレスが続く、つまりコルチゾールが出っ放し、尚且つこれに不規則な生活や食生活で栄養不足になり、ホルモンを新たに作る材料もなくなると細胞は悲鳴をあげて壊れます。
本来の副腎の機能を保てません。
さまざまなストレスが副腎を酷使し続け、疲労が進むというわけです。
人それぞれのストレスの感じ方は異なります。育ってきた環境が厳しいものであれば、すでに精神的な強さを持ち合わせていて自覚がないかもしれません。そのために身体を酷使して、物理的に肉体が先に悲鳴を上げることもあります。
逆に、身体はもともと丈夫でも、心に深いストレスを感じ続けることはコルチゾールをどんどん消費します。
そして、自己治癒力が低下した結果、目に見える形で病気を発症します。
軽いものから重いものまで、人間関係、肉体疲労、仕事や勉学のプレッシャー、睡眠不足、環境の変化、病気、有害物質、栄養不良、暑さ、寒さ、雨の日や憂鬱な月曜日の朝、ですら、『嫌だな』と思った瞬間にそれは『ストレス』に変わります。
副腎と肉体、副腎と心(脳)は密接に関係しています。
副腎が限界まできたとき、脳はこれを感知し、『これ以上、あなたの肉体が無理をしないように』危険を知らせ『守り』に入ります。生命維持を最低条件として、少しでもエネルギーを消費しないよう、身体の機能を停止させようと合図を送り、思考を停止させ、外部との接触を断つようにうながします。脳は『動かない、考えない、何もやらないように。』という、あなたを守るための防御体制を指示するわけです。
精神面では『だるい』『疲れが取れない』『仕事に行きたくない』『人に会いたくない』といった行動はストレスに対する当然の反応であるといえます。これを周囲は『性格のせい』『うつ状態』と判断する場合が多いにありますが、身体が動かないのは脳がそう指令を送っているからです。
身体は嘘をつきません。あなたの身体や心は限界まで頑張って、知らないうちに自分に無理をかけていたのです。その結果が今の不調です。『燃え尽き症候群』はまさにこの状態を言っています。
3. 副腎が弱る原因
その②コルチゾール不足の原因
原因は主に下の5つです。
① 栄養不足
② 睡眠不足
③ 有害物質の体内蓄積
④ 腸の機能の低下
⑤ 他の疾患の罹患
①栄養不足
”身体はあなたが食べたもので出来ています”
スーパーやコンビニ、外食産業には捨てるほどの食糧が溢れているのに、サプリメントやビタミン剤が必要になる現代人の暮らし。
人間や動物の糞を肥料にして野菜を育てていた昔と比べて、化学的な肥料で育てられた野菜の栄養価はビタミン、ミネラルともにずっと少なくなっていると言われます。身体はビタミンやミネラルを渇望していても、食事からは十分な量が得られない上、余分な糖分や脂肪を取りすぎることになります。
砂糖や脂肪はまた食べたい、食べるとホッとする、という気持ちが購買意欲を駆り立て、さらなる悪循環を招きます。
特に砂糖には中毒性があります。
とくにすでに砂糖に依存している人は一度食べるとしばらくしてまたすぐに食べたくなります。
身体が本当に必要としているのはビタミンたっぷりの新鮮な野菜であっても、広告で見た誰かが美味しそうに食べていたジャンクフードやお菓子を脳がまた食べたい、と思うのです。
身体に有害な添加物や化学合成された食品、身体が本当に必要な量以上の食事を摂取すれば、それを分解、吸収するために必要なビタミンやミネラル、体内の酵素を含めて、エネルギーはどんどん消費されます。
そのかわりに余分な質の悪い脂肪を含む食品や有害物質が身体に蓄積されていきます。
あなたの身体は本来、健康で完璧だったはずなのに、次第にそのバランスを崩してしまいます。
食品のなかには、本来ならヒトや生物の身体で処理できない農薬や化学物質、有害金属、アレルギーを引き起こすタンパク質が含まれていることがあるのは皆さんすでにご存知と思います。
食事をとって元気になるどころか、身体のなかにはこれらの異物への対応に一日中エネルギーを使わなければなりません。
ミトコンドリアは働き続けても追いつきません。さらに、身体に有害な大量の活性酸素を発生して、その処理も追いつきません。
これは身体にとってさらなるストレスの追い打ちをかけることになります。
人間は大便や尿、汗、吐く息、髪の毛、爪、月経の経血に体内で不用になったものを排泄(はいせつ・デトックス)する機能を備えていますが、デトックスのペース以上に食事や日常生活で不用なものを体内に取り入れていたら、いつか細胞は壊れます。排出しきれなかったものは長い年月をかけて身体のどこかに蓄積されていきます。副腎を含めていつかは全身の細胞を傷め、細胞修復を遅らせ、病気を発症させてしまいます。
コルチゾールを含めたホルモン、全身の細胞、副腎を含めた全身の臓器は私たちが食べたものから出来ています。
生きている限り挽回が可能です。今もあなたの身体は諦めずに働き続けているからです。生きることを諦めていません。そして、あなたの援護を待っています。
副腎を守るために、出来ることから始めましょう。
(体内に取り入れるものについては『食事編』を参照ください。)
② 睡眠不足
”常に戦っている状態”
”寝不足は食べ過ぎのもと”
睡眠不足は人を緊張状態(交感神経優位)にします。この状態では、体内のコルチソールやアドレナリンなどのカテコラミンが上昇します。これらの上昇で対応できている間は良いのですが、これが続くことは副腎を酷使し続けること、つまり、いつかコルチゾールが枯渇してしまうことになります。
また、睡眠に関して有名なのがグレリン、レプチンという2つのホルモンです。睡眠不足によって上昇したグレリンは食欲の増加をもたらし、時に不健康な食事による必要以上のカロリー摂取を引き起こします。
余剰なカロリーや排出しきれなかった有害物質が身体に蓄積される一方で、これらの解毒のために一日中フル稼働で身体は働き続ける必要があります。
質の良い睡眠をとり、正常を保とうとしている細胞たちを援護しましょう。
『疲れた時こそ睡眠時間を確保して身体を休める』ことが大切です。
(→『睡眠』)
③ 有害金属の蓄積
”身体に溜まる不要な金属”
鉄、亜鉛、マグネシウムなどの身体に必要なミネラルに対して、身体に悪影響を及ぼすミネラルがあります。
水銀
鉛
カドミウム
アルミニウム
ヒ素
と言った有害金属と呼ばれるものです。
身体に蓄積される有害金属は、米や野菜を作る土壌の中、汚染された海で取れた魚の体内、古い水道管や塗料、かつて歯科治療に使われた歯の詰め物を介して、私たちの身体のなかに取り込まれます。それらが蓄積され続けると、さまざま症状をもたらします。
例えば、体内で活性酸素を発生して細胞の老化や機能不全をもたらしたり、体内のタンパク質と結合することで、本来の正常な細胞の働きを邪魔します。
カドミウムはイタイイタイ病で有名ですが、土壌に含まれ、農作物から摂取し、体内に蓄積されます。また、微量ながらタバコにも含まれています。
一方、亜鉛は全身で使われる非常に大事なミネラルですが、この亜鉛とよく似た構造であるカドミウムは、亜鉛のフリをしてすり替わることができます。しかし本来の正常な機能ではないため、腎臓の働きが悪くなり、ビタミン不足を引き起こしたり、その結果、骨を弱らせ骨粗しょう症などの原因になります。
水銀は体内のタンパク質の形を変えてしまう、非常に毒性の高い金属です。昔、歯医者さんで歯の詰め物をしたことがある人で、アマルガムという水銀を含んだ合金で治療されていることがあります。使用されたのは無機水銀で無害だと言われ続けていましたが、これらが体内で有機水銀に変化する可能性が報告されています。歯科金属中に含まれたアマルガムは蒸気として肺から吸収され、血液中に流れます。熱い飲み物やガム、歯ぎしりによる摩擦でも体内に吸収される可能性も言われており、なるべく避けていただきたいと思います。
ちなみに現在では先進国ではアマルガム合金は歯科治療では使用されていません。
水銀は食事からの摂取も指摘されています。日本を含むアジアにおける大気中の水銀量や工業排出物による海水中の水銀量は世界でも群を抜いています。魚を多く食べる日本人では、とくに注意が必要です、マグロなどの大型魚を好んで摂取する人では体内の水銀量が多いことがわかっていますし、世界中で妊婦のマグロの摂取量は規制されています。
海底を歩く上海ガニを多く摂取する隣国でも、体内の水銀量が多い人が増えていることが言われています。
また、古い水道管などに依然利用されている鉛(なまり)がこの水銀の毒性を高めることもわかっています。
身体にはもともと、これらの有害金属を解毒、排泄する機能が備わっています。しかし、取り込む量が出ていく量を上回ったり、体質的に排泄する力が弱い人は長い年月をかけて体内に有害な重金属を蓄積していきます。
細胞は傷ついて、修復する機能も落ちていきます。『自己治癒力の低下』です。
ゆっくりと時間をかけて低下するミトコンドリアの機能は、『歳のせい』や『老化』という言葉で片づけられ、見過ごされている場合がほとんどです。
① 出ていく以上の有害金属を取り込まない
② しっかり排泄させる
ことが大切です。
→『食事』1.除去するもの ③有害金属 を参考に出来ることから始めてください。
④ 腸管機能の低下 ”腸は体の防御壁 ”
お腹の弱い人、便秘の人は副腎の弱い方が多いです。ストレスや緊張でお腹がゴロゴロ言う方は要注意です。
口から入った食べ物は、噛み砕かれ、胃から十二指腸、小腸、大腸に流れていきます。これらの通り道は『一本の管』になっているので『消化管』と呼ばれます。
消化管の壁は粘膜と呼ばれ、口の中のように柔らかく、ここから様々な栄養素を私たちの身体に取り込みます。
この壁に傷ができると、栄養を効率よく正常に吸収することが出来ないばかりか、不必要な異物(アレルギーの原因になるタンパク質、細菌、ウイルス、有害金属、化学物質)を取り込んでしまうことがあります。
取り込まれた、言わば ”異物” の処理のために肝臓や腎臓、全身の臓器はさらなるエネルギーを必要とします。
『リーキーガット症候群』がカンジダとセットで有名になってきました。グルテンフリーもこの流れでブームになっています。町の壁に穴があいて本来取り込まないはずの毒素や有害物質を体内に取り込むことで様々な症状を起こす、というものです。
腸の壁に傷ができたことを『穴があいた』と表現されていますが、実際には大腸カメラで覗いても、見た目には全く正常に見えるレベルです。
一つひとつの細胞の隙間にできた小さなすきまが開くことで、本来なら体内に取り込まないはずの異物、アレルギーの原因となる大きなタンパク質やウイルス、細菌が血中に入ってきてしまうというのがこの病気の原因と言われています。
(詳しくは『リーキーガット症候群』)を参照ください。
これらの物質は血液中に入るため、全身を回ります。これらの異物に対して、身体は一日中対応に追われます。
『炎症が起きる』ということです。
この『炎症』は火事に例えられます。
この火事の火を消すためにコルチゾールがどんどん使われます。
腸を助けて、炎上を食い止めることがカギです。
(『腸内環境を整える』を参照してください。)
⑤他の疾患の罹患
『持病がある』『痛みがある』というのはそれだけでストレスです。これらのストレスを感じると常にコルチゾールが必要となります。
アトピー、喘息、リウマチ、自己免疫疾患の数々がステロイドで治療されているのは有名です。身体が作り出すステロイド(コルチゾール)では量が足りない状態なのです。ここで、『魔法の薬』の登場ですが、一時的に劇的に効いても効果が長持ちしない場合、病気を長引かせてしまいます。
自分で出すステロイドの量を増やす、今後自力でまかなっていくために、
を参照してください。
Endnotes:
Hickey et al. “Dynamic Flow: A New Model for Ascorbate.” J Orthomolecular Med, 20(4), 237.
Cathcart
R. “Vitamin C, the nontoxic, nonratelimited antioxidant free radical scavenger.” Medical Hypothesis,18, 61-77.