· 

養生法 秋は肺をいたわる


古代中国では自然界のあらゆるものは5つの性質(火・水・木・金・土)からなると解釈しました。

 

これらの5つの性質が『お互いに関係しあい、その強さやバランスによって変化し、循環する』と考え、これを自然、人間、社会においても取り入れ、様々な思想が確立されました。

 

東洋医学でもこれと同様に、5つの要素がお互いに関係しあってバランスをとっていると考えます。



このなかでも、秋の時期に相当するのが

 

肺(はい)

 

です。


 

『肺』はご存知の如く、呼吸によって外気を直接体内に取り込む臓器です。

 

秋晴れの澄んだ空気を体内に取り込むことで、夏よりも少し冷えた外気を身体が感知し、身体の細胞が徐々に冬支度を行います。冷気は身体のミトコンドリアを増やし細胞を若返らせる効果があります。

(→詳しくは『ミトコンドリアを鍛える』を参照ください。)


夏の間に上がった体温で活発だった代謝も、秋になると働きが和らぎます。汗をかくために開いていた毛穴も、気温の低下とともに閉じて、身体の体温を保ちます。身体もまた冬支度を始めます。

 


この時期に、いわゆるストレスがかかる(交感神経が優位になる)と、再び毛穴は開き、体温を逃し、身体を冷やして皮膚の乾燥も進みます。また、ストレスで皮脂の分泌が増えますし、暴食による脂肪の摂取が過多になると皮脂の分泌が増えてニキビや皮膚トラブルの原因になります。サウナや過度の発汗はもともと『気を逃す』ことになりますので、これらも気持ちの良い程度にしておきましょう。

 

皮膚の乾燥とともに気道の粘膜(鼻の穴や喉の表面)が乾燥すると、粘膜の防御機能が上手く働かずに風邪のウイルスにも感染しやすくなりますので、加湿やマスク、うがいで乾燥を防ぎましょう。乾いた空気でも気道にはしっかり加湿する機能が備わっていますので、深い呼吸を意識しましょう。


『長い息』は『長生き』です


『肺』をいたわるのは『良い呼吸』です。

 

、この画面を見ている瞬間に、10秒間(できるだけ長く)大きいため息をついてみましょう。

次の吸う息はいつもより深くなっているはずです。たった一回でも意識して行う深い呼吸は普段の呼吸とは異なることがわかると思います。この一回の呼吸でも身体には普段よりも多くの酸素が取り込まれたわけです。

 

呼吸は、交感神経を落ち着かせ、脳をリラックスさせます。

また、脳細胞は身体の細胞の約10倍の酸素を必要としていますので、脳にいつもよりもさらなる栄養が行き渡れば、良い脳の状態が私達の日々の生活に良い循環を生み出します。


 

朝の、まだ静かな車通りの少ない時間に通勤時間をずらしたり朝の散歩で大きく深呼吸をするのも効果的です。休日のハイキングや森林浴に行くのは特にオススメです。

 

呼吸についてさらに興味のある方は、本編『呼吸』の項もご覧ください。

 

 


食事は『白い食材』を


身体の潤いを高める食材は『白い食材』です。

 

白菜

豆腐

大根

豆乳

白ごま

白きくらげ

れんこん

 

 

などが相当します。


水炊き豆乳鍋スープなどで身体を芯から温め潤すのも良いでしょう。

 

昔の人々は、特に米や芋などの食べ物が『気を高めるのに良い』と記していますが、これらの食材は昔よりも改良され、甘味も強く、さらに肉類、加工品、糖質過剰な現代人にとっては少し余るところがあるかもしれませんので程々にしましょう。


薬味は

 

生姜(ジンジャー)

シナモン(桂皮・桂枝)

 

を加えるとさらに保温効果が高まります。


 

蒸した生姜を干したものは『乾姜(かんきょう)』と呼ばれ、さらに保温効果の高い食材ですし、

指先や手足などの冷えには『桂枝』(枝の部分)を、

身体全体の冷えには『桂皮』を使いわけても良いでしょう。

 

スープに加えるだけでなく、白湯やお好みの飲み物に入れたり、カフェインが大丈夫な方は紅茶に加えると良いでしょう。


 

早く寝て、早く起き

悔やまず

心を落ち着かせて

むやみに動きすぎず

肺を冷やさない』

〜『皇帝内経』より引用〜


特に、この時期の呼吸は、冬の季節に向けて

 

気を補う、大きな蓄え

 

であることを覚えて、

深く丁寧に呼吸することを意識して、これから存分に秋を楽しみましょう。