病気と祈りの効果

古代の人々は、病気や災い、日々の暮らしの中で多くの祈りを捧げていました。

現代でも世界中には多くの宗教があり、また、特定の宗教を信仰しない人でも困ったときや叶えたたい事があると祈ることがあります。

 

祈りの効果と科学的な裏付けは医学の分野でも証明が試みられてきました。

 

有名なものに1988年に行われたアメリカでの研究があります。

のべ393人の心臓疾患患者(厳密には心臓疾患集中治療室/CCUに入院した患者)を対象になされたランダム化二重盲検試験です。病気の治癒を他人から祈られた患者達は対照群の祈られなかった患者に比べて、症状の改善や、抗生物質、利尿薬などの薬の投薬量の減少を認め、人工呼吸器の使用率にも有意差があったと結論づけられました。1)

 

これに続いて、今から20年前、もう一つの研究があります。

 

精神科の医師であったエリザベス・ターグ氏は、それまでに報告されていた様々な祈りの研究論文に目を通し、その研究デザインの不完全さを徹底的に分析しました。そして、彼女自身がこれらの疑念に挑むべく、変数を統制した緻密な研究デザインを組みました。

 

重症のエイズ患者40人を対象に、遠隔で祈りを受けた治療群と受けない対象群で治療に差があるかを検討したのです。完全に条件を合わせた二つのグループ、遠隔ヒーリングを行う治療群とヒーリングを行わない対照群は6ヶ月にわたって観察されました。

祈りを行うヒーラーは、経験豊富なキリスト教徒や仏教徒、ユダヤ教徒、シャーマン、アメリカ原住民の祈りを行う人々でした。各々が交代で対象に対して一日に1時間、アメリカの何処かから祈るというものでしたが、患者とヒーラーは一度も会うことはなく、どの時間に誰から祈られているかも患者に知らされることはありませんでした。

 

6ヶ月後、患者たちはエイズによる身体症状の数、通院日数や入院回数、入院期間、心理的状態について検討され、これらすべてが治療群で対照群を優位に上回ると結論づけました。

 

その一方で、症状や感染症の発症に関連すると言われているCD4陽性細胞(Tリンパ球細胞)の数の増減については有意差は認めませんでした。これについては6ヶ月という観察期間の短さについて自身が考察で言及しています。2)

 

エリザベス・ターグはその後、2002年に脳腫瘍で亡くなりました。

40歳という若さでした。

 

世界中が混沌とするなかで、多くの人が本当の幸せの意味を考えるようになりました。

 

みんなが自分や身の回りの人の幸せを祈るとき、同時に世界中で困っている人への思いやりも祈りの中に加えることが出来れば、どんなに素晴らしい世界になるかと胸が膨らみます。

 

彼女の生涯をかけたこの研究が私たちに教えてくれることは、祈ること、人の幸せを祈ることの力強さかもしれません。

 

1) R C Byrd, "Positive therapeutic effect of intercessory prayer in a coronary care unit population" South Med J.1988 July; 81(7): 826-9 PMID 3393937

2) F Sicher et al, " A randomized double-blind study of the effect of distant healing in a population with advanced AIDS. Report of small study." West J Med.1998 Dec; 169(6): 356-363 PMID 9866433